◆ interviews ■ 6078
インタビュー(octorber, 2002)の感想
 2002年10月某日、都内某所、6時35分、仕事を終えた僕はDaily-Echo 奥野氏を待っていた。11月に行うイベントについて打ち合わせを行うためだ。
 さすがに、10月となると夜は涼しい・・・風は冷たいくらいだ・・・などと思っていると、奥野氏が現れた。そして、奥野氏に連れられ、打ち合わせのために近くのビルの地下1Fにある喫茶店へ入った。
 中に入ると、いわゆる昔風の喫茶店であった。若者が集い、活気がある喫茶店・・・例えば、スターバックスなどのカフェとは違い、落ち着いたカンジの空気がそこにはあった。
 店の奥に入り、コーヒーをふたつ頼み、早速イベントについての打ち合わせを行う。


 打ち合わせも終わりかけ、時計を見てみると、すでに2時間ほど時間が経っていた。
 コーヒーはとっくになくなり、周りを見回すと何組かいた客もいなくなっていた。ヒマそうな店員、静まり返った店内、微妙に店の空気が微妙に良くなかったので、イベントのハナシを切り上げるコトにした。まだインタビューが残っていたのだが、気分転換ついでに、店を変えるコトにした。

 次に入った店はいわゆるカフェであり、土地柄もあってか客の多くが若者であった。
 時間はすでに9時近くになっていたため、僕はコーヒーとパンを買い、それを食べながら少し雑談した後、インタビューを開始した。
 このインタビューは前回の打ち合わせでお願いしたものであり、本来はメールで内容を送り、回答してもらうものだった。しかし、奥野氏から直接回答したいとの要望があったため、このようなカタチになった。

 インタビューの内容は、現在制作中のアルバムの進捗状況と近況などについてであった。もともと、メールで回答してもらう程度の内容であったため、10数分程度で終わってしまった。
 あまりにもあっけなかったため、奥野氏から「何でも聞いていいよ。」と提案があったので、フリートークのようなカンジでイロイロと聞いてみた。


まず、イチバン気になっているアルバム制作の進行状況について聞いてみた。
曲と詞が完成しているものについては、24,5曲程度あり、その中で次のアルバムに入れる曲はすでに決まっている。次のアルバムの収録予定曲について、アレンジを詰めている段階である。ファンが今まで待ってくれたのだから、本当に納得行くものを自分達の手で作り上げたい。そして、現在まで2曲がアレンジまで完成し、レコーディングを終えている。とアルバム制作の進行状況を教えてくれた。
 Daily-Echoとしては、新作を心待ちにしているファンに早く新しい音を聞かせたいという思いもあるが、納得行くものを出したいという思いもあり、遅くなっていると言う。僕個人としては待つコトに慣れたので、いくら時間がかかっても本人達が納得行くように作り上げて欲しい。
 確か、2000年3月に行われたイベントで「New アルバム 7月リリース」というフライヤーが入っていたと思うが、単純に考えてその時まで出来上がっていたものとは、全くと言っていいほど違うものが出来上がりかけているのではないかと思う。
 今回のアルバム制作ではプロのレコーディングエンジニアがいるワケでもなく、プロのスタジオミュージシャンがいるワケでもないため、レコーディング機材の設定から演奏までをほとんど自分達で行わなければならない。そのため、時間がかかっているようだ。ただ逆に自分達ですべて出来るというコトは、自分達が完全に納得行くまで出来るというコトである。その上、締切があるワケではないので、時間をいつまでもかけられる・・・しかし、そんな状態で作って行くとだらだらとなってしまう可能性があるので、あまり良くない。というようなコトを奥野氏は言っていた。
 最終的に収録曲がすべて完成し、僕の手元に届くのはいつになるかは解からないが、地道に制作は進んでいるので、気長に待ちたいと思う。

 その後、Daily-Echoや奥野氏を取り巻く環境などについてのハナシになった。
 「現在のDaily-Echoは生活の一部に音楽がある。」と奥野氏は言っていた。プロとしてやっていた頃は、ある程度音楽漬けの生活をしていたようであり、それなりのプレッシャーの中で音楽を作っていたのだが、プロという立場を離れ、現在は自由に音楽を作れているようだ。
 また奥野氏は「今は目の前にあるコトを一生懸命やるようにしている。」と言っていた。これは日常の中にある流れを大事にしていると受け取れる。例えば、目の前に掃除の順番が来たら、それを一生懸命やり、音楽の順番が来たら、それを一生懸命やるというように、日常の流れを大事にしているようだ。プロとしてやっていた頃は、ムリに音楽を目の前に持って来なければならない時もあったと思うが、現在のDaily-Echoは前述した通り、自由に音楽を作れているようだ。
また音楽活動についても、これと同様にイロイロな流れ(イベント出演など)があれば、「とりあえずやってみたい。」と言っていた。その流れを見て、どうしようか考えるよりも、とりあえずその流れに乗ってみて、その結果どんな効果があったかを考えて行きたいようだ。「やってみたコトがその時はイヤだったり、ツラかったりしても、後で振り返ってみれば、ドコかで+(プラス)になると思うので、出来るコトはやって行きたい。」と言う奥野氏はとてもプラス思考に感じられた。

 余談になるが、メジャーデビューした直後の大抵のアーティストは、それまでやって来たコトをメジャーと言う場所に置き換えて活動して行けばいい。しかし、1stアルバムが出来、1stツアーが終わったあたりで、次はどうしようというコトを悩んでしまうケースが多いように僕は思う。
ある人曰く、「どのアーティストも1stアルバムはいいんだけど・・・。」と言っていた。もちろん、このコトはすべてのアーティストに当てはまるものではないと思うが、かなり鋭い意見だと思う。
 メジャーデビューし、ライブまで一通りのコトが終わった時点で、次にやりたいコトを見出さなければならない。その上、それには売れる要素が含まれていなければ、プロとしてやっていけない。かと言って、それを探すために休んでもいけない。プロとして事務所に所属している限りはレコード、ライブ、TV出演、雑誌等のインタビューなどある程度の成果がなければならないというプレッシャーがある。
 ・・・とこんなコトを奥野氏とのインタビューの間に僕は思っていた。
 「音楽をビジネスとしてやる場合、向き/不向きがあり、Daily-Echoはあまりそれが向いていなかったと思う。」と奥野氏は言っていた。Daily-Echoの音楽の原点は日常であり、もともと趣味から始まっている。それをビジネスに置き換え活動して行った時、時間が経つに連れ、矛盾が生じてしまったのではないかと思う。
 やりたいコトをやりたいようにやる。それはデビューしたばかりのアーティストには難しいものである。大御所になってしまえば、そんなコトも許されるのだが、締切があり、それのために自分達が納得行かないものも出さなければならない、やりたくないコトも売れるためにやらなければならない、それをビジネスだと割り切って、こなしてしまえば、プロとして続けられる。しかし、やりたくないコトをムリに続けて、それが限界に来た時、バンドは解散し、ソロアーティストは音楽から離れてしまうのだと僕は思う。
 ただ、Daily-Echoは解散や音楽から離れるというコトはなく、自分達と音楽との関係を良いものに戻すために、メジャーというステージから去ったのではないかと僕は思う。

 「音は正直なものであり、試しに弾いた場合、レコーディングで気合入れて弾いた場合では全然音が違う。」と奥野氏は言っていた。やはり、音にはその人の心境などが表現されるのだと、このコトを聞いて僕は実感した。
 僕はあるアーティストを好きになって、ある程度売れてしまうとあまり興味がなくなってしまうコトが多い。これは「みんな聞いてる」、「ライブのチケットが取れなくなってしまう」などの理由だと自分では思っていたが、もしかしたら違う理由かもしれない。
 デビューの頃はそのアーティストのやりたいコトがレコードに表現されていたが、プロとしてやって行くうちに、ビジネス的な音がレコードに表現されてしまい、僕はそれを嫌い、そのアーティストから離れたのかもしれない。
 売れているにも関わらず、僕が好きなアーティストは、売れるための音ではなく、彼らのやりたいコトがレコードに表現されているかもしれない。
 逆に僕が好きなアーティストを他人に薦めると、演奏がヘタという理由で受け入れられないコトがあった。これは僕が音感と演奏に関する知識が乏しいからではないかと思っていた。しかし、今回のハナシを聞いて、実際そのアーティストの歌や演奏がうまくないとしても、レコードに一生懸命さが表現されていて、それが歌や演奏の上手さを越えて僕に伝わっているのではないかと思った。


 合計2時間弱のインタビュー・・・というよりも、雑談の内容について、自分が感じたコトを書いた文章となっているが、これを読んでDaily-Echoの近況が少しでも伝われば・・・と思う。
インタビューの中で事務所を離れてから今までのDaily-Echoについて、断片的に知るコトが出来た。今のDaily-Echoは生活の中の一部に音楽がある。これは昔(メジャーデビュー前)のDaily-Echoの状態に近いのではないかと僕は思う。事実、2002.9.4に行われたライブの感想でも、そのような感想が寄せられていた。
 奥野氏は「東京にいながら、心だけを旅させるようなそんなカンジになろうとしているのではないかと思う。」、「そして、その旅は一番楽しいスケジュールのない旅。」と言っていた。スケジュール外の出来事・・・例えば、電車でたまたま向かい合わせた老人におまんじゅうをもらって雑談したハナシ、なんとなく寄った場所の景色、なんとなく入った店で食べた食事の方が、印象に残るというようなハナシをした。これを音楽で表現するとどのようになるのはか解からないが、きっと想像外の楽しさがそこにはあるのだと思う。
 メジャー時代を否定するワケではなく、あの時はあの時で良かった。そして、そのコトをバネにして、次の姿に変幻しようとしているDaily-Echoを僕は感じた。
 そして、「自分達でのレコーディングを始め、最初は苦戦したが色々な人に助けられながら、今ではココまで出来るようになった。」と言う奥野氏は自信に満ちているように感じられた。
 今回、レコーディングしている音源がそのまま手元に届けられるのかは解からないが、"生活の一部に音楽がある"、"「良い加減」で音楽を作っている"、"日常が音楽になっている"Daily-Echoの次回作はきっと素晴らしいものになると思う。
そんなDaily-Echoの次回作を気長に待ちたいと思う。

2002.10.17
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